オンラインお菓子教室 動画撮影編(ちかレポ)

​中高生の女の子たちが7人、笑い転げながらお茶を淹れてる。9時から始まった撮影はすでに9時間経過、こちとら足腰が辛くなってきたっていうのに、なんでこんなに元気なんでしょう。

松本先生からオンラインのお菓子教室の構想を伺ってから、世の中に溢れてるお菓子作り動画を手当たり次第見た。くるくる巻いた長い髪をまとめもせずにシフォンケーキを作るひと、あきらかに大きすぎるボウルを使ってるひと、先生と生徒のかけあいが下手な漫才みたいになってるものなど、つっこみどころ満載の動画にたくさん遭遇。それと、生地や道具の扱いが汚いものが多い。なんだか残念だし、これしか知らないひとがいるのかとおもうと悲しくなる。

じゃあ、ミサリングファクトリーならではの動画ってどんなものだろう。キーワードは「ただしい作りかた」「きれいな所作」「良質な材料」。それと、「子供の理解を育てる指導」。子供だから出来ないなんてこと、実はほとんどないんだよね。出来る様に教える、出来るまで教える。

松本先生は、今度動画録るんだけど、どんなのがいいかなあ、と、レッスンの時に子供らにもリサーチしてた。「こどもとか映ったらいいんじゃない?」お、言いましたね。それでは映ってもらいますよ。

ということで、手を挙げてくれた中高生7人が、生徒役でかわるがわるお菓子を作ることになった。映像のプロをお呼びして、なんと一日で5種類(ジェノワーズ、パウンド、パートシュクレ、ガトーショコラ、シューアラクレーム)作ってるのを録るという殺人的スケジュール。一種類に約1時間の撮影+30分の準備ですって。

一本目はカメラなどの調整もしつつ、先生もスタッフも感覚が掴めるまで時間がかかったので、終わってみたら一時間押していた。こ、これ、今日中に終わるのでしょうか?

材料、道具、作ってる最中、オーブンへの出し入れ、型からの外し方、保存の仕方。ありとあらゆるシーンを撮影する。見たこともないライトやカメラが何本もそびえ立っているスタジオの、三脚につまづかないよう、画角に入ってしまわないよう、ドキドキしながら動き回る。7年前の本の撮影の恐ろしい記憶が一瞬蘇るけれど、今日の先生はなんだかとても嬉しそう。それはやっぱり、小さい頃から育ててきた素晴らしい娘たちがそばにいてくれるからだと思う。

先生が用意してくれた崎陽軒のお弁当を食べながら、「次出番だよ、早く食べなよ」「ええっ、まだ時間かかりそうだから、次替わってよ、あたしシュークリームやりたいもん」「シュークリームやりたいからってゆっくり食べてるんじゃないでしょうね」なんてやりとりで笑わせてくれる姉妹。「今日が本当にすごく楽しみだった」と瞳をキラキラさせてる大学生。いつも対面で見ている先生のデモを並びでじっと見たあとは、レシピを見るでもなく粛々と自分たちのお菓子を作っていく。道具を古布で拭いて片付けるまでの流れ全てがとても美しくて見惚れる。自分の作る番じゃない時は、計量やセッティング、片付けをサクサクこなす。完璧。最後は残ったシュクレで仲良くクッキーの型抜き。この子たちは本当にお菓子作りが好きなんだなぁ、と、なんだか愛おしい気持ち。

気づけば5種類の撮影は終了、全体では30分押しというところまで追い上げていた。試食の様子も録ると言うので、いつものようにお茶を淹れる女子たち。ホットとアイスの注文数がごちゃごちゃになっては笑い、お茶が濃くなっちゃったと言っては笑い。そして大量に並べたお菓子をほとんど平らげ、少し残ったものをジャンケン争奪戦。それを見て、「周年祭みたいねー」「今年は無かったけど、今日は良かったねー」とにこにこするみなこさん。

「遠くに行くならみんなで、だね」と疲労の中にも達成感でいっぱいの様子の先生。数日前まで、緊張しすぎて気持ち悪いっておっしゃってたのが嘘みたい。チーム作ってなんかやる、ってことにかけて松本美佐の右に出るものはいなくってよ。

さて、実はここからが大変な動画作り。でも間違いなく、唯一無二の素晴らしいものになると思う。完成をみんなで楽しみに待とう。

(坂本 知香)

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